焼き芋がうまいことを知って欲しい

唐突だが、焼き芋の研究をしている。  

きっかけは、展示会で試食したことだ。私は展示会に行くのが半ば趣味のようになっており、一時期はかなりの頻度で行っていた。食品関係だと

あたりだ。自分に全く関係のない業界でも無駄に動向やトレンドを把握していたりする。なかでも飲食関連の展示会は試食が出来ることが多く、全国の旨いものがタダで食べられるという意味でもオススメである。

で、芋だ。

焼き芋はどういうわけか一定のサイクルで流行が来るわけだが、これはなぜなんだろうと以前から気になっていた。機器のイノベーションなのか、景気サイクルなのか、品種改良が進んでいるのか、誰か仕掛け人がいるのか。

明確な答えが見付かっているわけではないが、機器のイノベーションではないということだけは展示会で把握していた。なにせここ10年くらいで一番の流行りは「壺焼き」である。展示会でも大盛り上がりであった。

壺焼きは100年単位で遡ることができる古典手法であり、焼き方も代わり映えはしない。炭を入れるだけだ。壺は様々種類がありメーカーさんは色々言うのだが、その調理原理からして科学的にはどれでも同じと思われる。「この壺だから旨く焼ける」なんてことはないのではないか?と思っていた。

壺的なものはその辺のホームセンターでも植木鉢として売っているし、壺焼き用に加工するのはそれほど難しくなさそうだ。

私でもできそうである。

焼き芋を作るぞと決めたのは一昨年で、クローバーをやることにはなっていなかった。単に、庭にMy壺を設置し心置きなく芋を食らおうとしたわけだ。ところが今はなぜかクローバーをやっているから、せっかくだからクローバーでも新メニューとして加えようと思う。そんな流れだ。

焼き芋をつくろうと思ったのにはいくつか理由がある。

  1. そもそも私は焼き芋が好きだ。外で寒い中食べるのは格別だ。初詣の際になぜかいる焼き芋屋さんからは毎度買うハメになる。
  2. 震災の時に食べ物にとても苦労した。都会にいたからこそ手に入ったものもあるが、だからこそ手に入らなかったものもあった。仙台朝市で超便乗値上げされた野菜達を会社の駐車場で社員みんなで食べたのは今ではいい思い出だ。炭や薪は山のようにある。芋は島津家よろしく非常食としてとてもよい。
  3. 私は農家になりたくてこの地に来たのだが、そこで育てる野菜リストには芋が入っている。というかすでに畑の前の持ち主さんが芋を育てている。素人でも比較的育てやすいと聞くし、救荒作物のようだから素人の私でもなんとかなるかもしれない。
  4. (まだ飼っていない)犬と一緒にできるイベントとして活用したい。日本国民は全員、犬に「ここ掘れワンワン」と言われたいはずだし、私はこの点においてはかなり偏差値の高いここワンマニアでもある。泥だらけになって一緒に掘りたいし、それを犬に食べてもらいたいとも思っている。かなり楽しげな休日になりそうではないか。
  5. 炭はすでに研究済みで、魚を焼くためにいいのを揃えている。様々な種類を試し種類ごとの特性や扱いもわかっている。芋であればどうすればいいか?はおおよそ想像が付くから学習コストは低そうだ。
  6. 部屋が寒い。焼き芋の壺は暖かく、エアコンの対流熱と違って輻射熱だから芯まで温まる。壺単体で暖房の代わりというわけにはいかないが、焼き芋のいい匂いと一緒に暖まれるならなかなか幸せなことだ。
  7. 今はランチ提供を休んでいる。従ってミミズにあげるための野菜くずがでないのである。ミミズはカボチャやサツマイモ、バナナなどの繊維っぽい食べ物がが大好物である。
  8. お客さんの手を温めたい。エサを付ける関係で釣りキチの方はしっかり準備してこられるが、それ以外の方は素手のことが多い。

そんなわけで、色々な品種を色々な焼き方で試してみた。

基本的には温度管理が重要で、要するにβアミラーゼが活性~失活する間の温度を表面から中心まで満遍なくできればいい。その温度は論文によって違うのでここは実験で確認してみるしかないが、何せ冬はお客さんがいないので暇である。幾重失敗しても問題ない。調理技術のない私は”塩梅”を持ち合わせていないので、実験を繰り返すくらいのことしかできない。

結果、まずまずのものができあがった。しっとりねっとりで、皮際から中心までどこを食べても甘い。

まだまだ実験を重ねて改良していくが、ひとまず提供してみてお客さんからフィードバックをもらいたいと思っている。人柱になってもいいという方は是非感想をお寄せいただきたい。

釣りながら手がかじかんでしまったら、芋で手と体を温めて欲しい。ちなみに、芋で釣ることもできて、食いつきはまぁまぁである。

室内でお召し上がりいただく場合は芋を引き立たせるソースなどが付きます