バイクの死に場所

写真の2台のバイクは店舗の出入口に長く放置されているものだ。左側の黄色いのがハーレーのスポーツスター、右側の赤がホンダのCRM250という名のバイクだ。

一台くらいはハーレーを持っとくかということで若い頃に(ハーレーの中では)入門用として名を馳せるスポーツスターを中古で買ったのだが、自身の総走行距離は1キロにも満たない。走り出して200メートルでベルトが切れ、それ以来修理と車検だけはしていたが、今は完全なオブジェである。

CRMは18歳の頃から都合5台購入していて、このバイクはその中の最後に購入した一台だ。会社のスタッフがバイクの免許を取るというのでその取得代の一部を補助してあげ、とりあえず乗ってみなよと貸したものの数年間全く乗らなかったために錆々の不動車として戻ってきたものだ。

いずれのバイクも将来は自分でメンテなどを楽しみながら復活させようと思ったのだが、クローバーを開店するにあたり引っ越すことが決まり、家には置き場所がないためにオブジェとして置いている。

ちなみに二台とも鍵は刺さったままなのだが、今のところ誰も持っていってはいない。私は鍵を掛けるという習慣がなく、引っ越すと最初になくすのは決まって部屋の鍵だ。ほかのバイクも車も金庫の鍵も、掛かってはいないか、刺さったままだ。世の中に悪い人はいないと信じているのである。なお、店舗だけはスタッフの反対にあいさすがに鍵を掛けているし防犯対策は趣味のようでおもしろいため、結構やっている。悪い人はこの世にはいないはずなのだが、一応ね。

この日記をドロボーさんが見ていて盗もうと思っていたら注意して欲しいのは、鍵は刺さっているかもしれないしバイクに見えるかもしれないが、実態としては300キロ近いただの鉄の塊だということだ。ありとあらゆる部品が固着しており、ブレーキはかなりの怪力が掛けているであろうというレベルである。ここに移動するための特別な装置を作ってわざわざ運んだものであるから、普通に持っていこうとしても難しい。おまけに修理費用は中古の同じ車種をそれぞれ2台ずつ買えるくらいは掛かると思われる。要はゴミなのである。私にとっては大切なもので将来の大きな楽しみだけど、市場からは価値がマイナスのものなのである。よく鉄くづ屋さんが「こんなの何の価値もないから引き取ってやるよ」とアポなしで来るのだが、大きなお世話である。乗り物ってのは大抵その人なりのストーリーがあって思い出の残り香があるものなのだから、そんな風に言うのはいくないぞ。

当店の前の道路はツーリングコースであり、バイカーさんやクラシックカーなどがよく通る。バイクと釣りは相性が悪そうだが釣り堀であればそうでもないと思って「バイカーに優しい釣り堀」としてアピールし置いているのだが、さほど成功はしていない。ただ、たまにツーリングの途中で来て下さる県外の方がいて、「乗らないバイカー」である私はバイク好きの皆さんのバイク話をふんふんと聞かせてもらえて大変満足している。

私は不動車をあと13台持っている。もっとたくさん置いておけば壮観でアピールになるかも知れないが、中には動かさぬうちにどんどん価値が上がったバイクもありそうもいかない。

クローバーはバイクの死に場所としてなかなかいいロケーションなので観察がてら入れ替えも検討している。

いずれラピュタのようになっていくのを期待している。