最強のエサができた、そして今後の展望
以前ミミズの養殖のことを書いたが、与えるエサや環境差異、最難関の越冬を経て、一定程度成果が出たため試しにそのミミズで釣りをしてみた。
全く異なる飼育方法でそれぞれ増やしたため、サンプルは3つある。一つは一般的に流通されている情報で飼育したもので、もう一つは釣りエサ特化型だ。釣りエサ特化型はさらに大きさを抑えて育成したものと、ある程度大きくしたものだ。
結論から言うとどれもとても釣れるエサとなった。「一般型」についてもまずまずなのだが、特化型はヤバい。
1番池では10秒もたない。4番池のデカいニジマスでさえ秒殺だ。デカい魚も「狙って釣る」ことができる。素晴らしい!
3種類のミミズの何が違うのか?何によってその変化が起きているのか?は企業秘密であるが(といっても要するにアミノ酸の含有量と臭いを維持することに腐心しただけの極めて単純なものではある)、半年以上掛けて3つの仮説を実証できて嬉しい。
これで万が一魚がスレてしまっても子供たちに喜んでもらえる。これが本当に嬉しい。一匹も釣れずにベソかいて「つまんなーい」と言っている子供を見るのが本当に苦しかった。遠くまで来て高い料金を払ってもらったご両親や祖父母の方にも申し訳なく思っていた。
今後は違った景色を見せることが出来そうだ。執念を燃やして取り組んできたのだが本当に良かった。ミミズの養殖をしていると友人に話すと大抵「何それ?」とちょっと小馬鹿にした取り上げられ方をされることが多かったが(悪気はない)、何を言われようと子供が釣れるのであれば全てのプロセスは正解なのである。
釣りは楽しいものなんだという釣り観をもってもらい、いつの日か訪れるであろうその子にとっての釣りの”次の機会”にバトンを繋げることができそうだ。
目下の課題は釣れすぎて面白くないのではないかということ、ミミズが苦手な子供や奥方にはどうするか、釣れすぎると経営に打撃を与える商品であることだ(笑)。
使いどころが難しいが、一つの大きな課題を解決したということでヨシとしよう。
なお、私は斑気な性質なので早速次のターゲットに狙いを定めている。
短兵急だが、ブドウ虫とミツバチである。
その1.ブドウ虫
正確にはハチノスツヅリガの幼虫で爬虫類クラスタにはハニーワームと呼ばれる。本物のブドウ虫はブドウスカシバという蜂に似た蛾の幼虫なのだが、ハニーワームよりも小さく養殖難易度が高いことから主流から外れてしまったため、釣具屋さんでも大抵はハニーワームをブドウ虫という名称で売っている。
以前から「害虫の分際でなんでこんなに高いのだろう?」と疑問に思っており、論文を読み進めるうちにいくつか未だ不明な点が残っていることを知り観察したいと思ったのがきっかけだ。爬虫類や両生類のよいエサになることもあり、ミミズ同様将来飼う予定のペットやニワトリなんぞにプレゼントしたいと思っている。
仄聞したところでは繁殖は容易で、一般家庭におけるその手法は6~7合目まで完成されつつあるようだが、以下の3点でまだ改善余地があったり、当店が用すには課題がある。
- 効率性…手間とコストを掛けずに大量生産しなければならない。私は虫の養殖業者ではなく釣り堀屋である。選択と集中、大事。
- 保管性…幼虫の状態を保持したまま一年中使えるようにしなければならない。例えば冷蔵庫に入れておけばしばらくは蛹にはならないのだが、さすがに幼虫と同居した冷蔵庫から取り出したものを食うのは気が引ける。やつらは脱走名人で、柔いプラケースなどでは噛み砕いて脱走してしまうのだ。
- 安全性…蛹や成虫になられては困るので、幼若ホルモンアナログなどの成長抑制剤を投与・噴霧し幼虫のままでいてもらう必要がある。これが魚や人体にどんな影響があるかを調べる。または、これらを用いずに長い期間幼虫のままでいてもらうための別の方法を確立せねばならない。
最後の幼若ホルモンがうまく行けば1と2の手間や成果が変わってくるのだが、これが難所である。一口に「投与・噴霧する」といっても極めて少量でなければなければならないのだ。例えばピリプロキシフェンという薬剤にした場合、0.0001〜0.005 mg/ml程度の濃度にしなければならないようなのだが、それは産業・実験用の装置などがないと実現できそうにないし、できるからといってそんなものは持っていても仕方がない。別の方法を考えるか、ほかの有効成分になり得る薬剤で試すことになる。
これが難しいまたは安全性に問題がありそうな場合は冷蔵庫で保存ということになるのだが、一般家庭用のそれでは少し温度が低すぎて死んでしまったり、いくら抑制できると言っても一年中その状態というわけではないのでずっと何世代にもわたって面倒を見続けなければならなくなってしまう。んなことはやってられん。
なかなかに探求しがいのある課題たちである。ちなみに私が最も苦手な虫は蛾であることも付言しておく。
その2.ミツバチ
社会性昆虫については子供のころから非常に興味があり、夏休みの自由研究ではアリの群知性と社会性について発表しけっこうな賞を取ったくらいには追い続けている。仙台から白石・蔵王に引っ越してくる理由の一つがアリの観察であり、そのために専用の部屋も作る予定でいるくらいだ。
どうしてミツバチなのか?
お店に出現するデカいアリやアブをエサとして釣ってみたら意外と釣れることが判明したこと、花をたくさん植えて愛でたいこと、そもそもミツバチはかなりかわいい昆虫であることなどからいつか共生したいと思っていたところになぜか釣り堀屋を始めるというイベントが人生で発生したことなどがきっかけだ。自分が育てた花に集まってくるミツバチ、それをたくさん写真として収めたい。なかなかよさげなアルバムができそうだ。
養蜂はちょっと前から流行っているが、みなハチミツに夢中である。それは私も異存はないのだが、当然死骸も大量に出る。それを無駄にはしたくないし、有効活用できる職業は釣り堀屋くらいのもんではないか?
今年から取り組もうと思っていたのだが届け出の締切を過ぎてしまったので来年からということになりそうだ。
ちなみにブドウ虫の育成にはハチミツを用いるので自家製ハチミツを使おうと思っている。また、そもそもブドウ虫(=ハチノスツヅリガ)は”蜂の巣”というくらいだからミツバチの天敵であり、その両方を観察・マネジメントすることはより高いレベルで生態を理解できそうである。
ミミズが苦手な人にはブドウ虫を、それもダメだという人にはミツバチを提供してみようと思っている。セイヨウミツバチにするかニホンミツバチにするかはまだ決めていないが、いずれにせよかなり難易度が高いことが予想されるので期待せず続報を待って欲しい。
蔵王にはやたら多くの種類のアリが生息しておりこちらの観察にも忙しいので時間をいかに作るかが勝負になりそうだ。